8回パーフェクトで降板の是非

NPB

2022年4月17日(日)、千葉ロッテマリーンズ-北海道日本ハムファイターズの試合にて、物議を醸す采配があった。様々な思想が見え隠れしたように感じるので、自分なりの見解をまとめてみたい。個人的には支持したいが、反対意見があっていいと思っている。

2試合連続完全試合目前での降板

千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手は2022年4月10日のオリックスバファローズ戦にて、プロ野球史上28年ぶり16人目となる完全試合を達成した。少なくとも9回までエラーも含め1人の走者も出さずに試合の最後まで投げ切る、その上でチームが試合に勝利すると、その投手は完全試合達成と認められる。1994年の槇原寛己氏(元巨人)を最後に出ていなかった大記録が達成された。20歳での達成は史上最年少。

こうなると次の登板は当然注目度が俄然高くなる。蓋を開けてみたら、なんと8回まで投げてまた1人の走者も出さなかった。2試合連続ノーヒッター、通算2回目の完全試合、いずれもプロ野球の歴史上誰一人として達成できた者はいない。私も当然、歴史的瞬間を見たかった。ところが佐々木朗希投手は8回まで投げ終わった後に降板。これが賛否分かれた。

何故投手を替えたか

選手の体の詳細については企業秘密のようなところがあるので、全てが明らかになることは佐々木朗希投手が現役のうちは無いと思っている。なので報道された話と推測で語る。

体肘への負担

佐々木朗希投手は8回まで投げて102球。プロ野球ファンをやって長くなると、中6日での登板で次も予定通り中6日なら120球くらいイケるのでは?みたいに考えるようになりがち。正直私もそう考えて2試合連続完全試合を期待していたし、降板反対派の意見の中にも球数が理由として挙げられているのを見た。

そんな中Twitterに流れてきた投稿に、腑に落ちるものがあった。普通(といってもプロ水準)の先発投手で8回まで102球なら9回も投げて次も予定通り投げるかもしれないが、投げてる球が普通じゃなさ過ぎて体への負担もまた普通じゃない、という旨の投稿。

2022年登板4試合目までの佐々木朗希投手のストレートの平均急速は160km/hに迫り、MLB水準でも最速レベル。MLBだとジェイコブ・デグロム投手やゲリット・コール投手のように、投げる球が速過ぎて体が耐えられず怪我をしてしまった投手もいる。それでも復帰すればまた剛速球を投げるのだがら、球速は大きな武器なのだろう。

武器を活かしつつ20歳の若い才能を今後も活躍させるため、「先々を考えるとあそこが限界だった」と試合後に井口資仁監督が話していたので、理由としてそれは間違いないだろう。まだ4月。先は長い。

また、7回辺りから制球がやや乱れていたため、走者を出してしまうのは時間の問題だった可能性も考えられる。

0-0だった

井口監督はコーチとも相談の上それとこれとは別である旨のコメントをしていたが、全くの無関係とは個人的に思わない。

敢えて実名を出してしまうが、2005年の西口文也氏(元西武)のように9回パーフェクトに抑えても味方も無得点のため記録が認められない、延長戦も投げたら結局ヒットを打たれる、みたいな事態は避けたかったのではないかと、勝手ながら勘繰ってしまう。そうなるくらいならもっと早く替えた方が良かったという事態は、それはそれで後味が悪いだろう。

味方が得点していたら、次の登板間隔を長くしてでもMLBでも前例の無い歴史的大記録達成に挑みやすかった気はどうしてもする。続投を選択しない理由が図らずも出来てしまった心理的側面がゼロであったとまで言えるかと考えると、無理がある気がする。一部外者の完全な主観だが。

何が言いたいかって、ロッテ打線を無得点に抑えた上沢直之投手、堀瑞輝投手、北山亘基投手、宮西尚生投手が見事だった。

反対派の意見

全員が全員納得というのは難しいもので、今回の件でも反対意見は私がTwitterで見かけただけでいくつもあった。それにも触れたい。議論の余地が生まれたという観点で健全な現象とすら思っている。

二度と見られる保証が無い

プロ野球の試合が最初に行われたのは、1936年4月のこと。戦時中の中断や開幕延期、短縮日程などの特殊な事例がありながらも今年でそれから86年。これだけの長い歴史がありながら、先述のように完全試合を2試合続けた者は誰一人いない。2試合連続ノーヒッターは、MLBならジョニー・ヴァンダー・ミーア氏という人が唯一達成しているがNPBではこれまた誰一人達成していない。

その両方が同時に実現する可能性が、現実になった。対戦相手及びそのファンの人や関係者各位はまだしも、歴史的大記録に歴史的大記録が重なるとんでもない事が現実になるのを見たくない人が野球ファンにいるだろうか。感情だけで言えば、私だって見たかったに決まっている。リスクを冒してでも記録に挑んで欲しかった感情はあるに決まっている。

できる事はできる時にやって欲しい、というのはこの件に限らず思う。

何故壊れる前提なのか

続投には怪我の可能性を確かに伴うが、そのリスクがあるか無いかで言えば常にある。続投すれば怪我をすることが確約されているわけでもない。

怪我のリスクは確かに考慮しなければならないが、過敏になってしまうのも考え物。もう一歩踏み出す機会が失われ、それが成長の妨げになる可能性だってある。

これは見極めが本当に難しい話。リスクがあるからやらない、なんて考えでは一生何もしないことになる。佐々木朗希投手は1シーズン通して先発ローテーションとして回った経験が無いため、チームとしても手探り状態だった可能性も考えられる。

正解は無い

目の前の記録よりも先々を考え、また本人も納得していたとのことなので首脳陣のこの判断は支持したいが、反対意見も理解できる。プロ野球は興業。ロマンの瞬間最大値の高さを求めるか、長く続く一定以上を求めるか、線引きは一概にはできず難しいところ。体は一人一人違う。

あのまま続投していたら本人の体の状態含めどんな結果が待っていたか、それは推測でいくらでも妄想を膨らませられる。完全試合達成にしても怪我にしても、どちらが約束されているわけでもない。失点して負けた可能性だってある。未来は不確実要素だらけ。

だからこそ議論の余地がある話で、「これが正解!」と最初から決め付けては見方考え方が更新され発展に繋がる機会をも奪ってしまう。賛成だから、反対だから、で善し悪しは決まらない。何故そう考えるのか、結論ありきの押し付けではなく意見を聞くことで議論をすることが、私のような見ているだけの側の人間にできる唯一の事ではないかと思う。

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